「なぁ、大佐。バレンタインにマフラーやるから、錬成と手作りと購入どれがいい?」
エドワードの爆弾発言に、ロイもその場にいたホークアイとハボックも、そしてエドワードの後ろにいたアルフォンスも固まった。
「・・・大将、お前バレンタインを知ってたんだな」
しみじみと呟いたハボックをエドワードは睨む。
「すげぇ馬鹿にしてねぇ?町の中歩けばそれぐらい気付く」
つまり自発的ではなく、周りに感化されただけとも言える。
それでもロイは予想外の言葉に嬉しくて、顔をにやけさせていた。
一方ホークアイが問う。
「でもエドワード君、どうしてマフラーなの?バレンタインにあげるのならチョコレートでもいいのよ」
バレンタインにマフラーをあげるカップルがいないことはないだろうが、チョコレートをあげるのが主流ではないだろうか。
「えー、大佐のためにチョコを買うくらいなら俺が食う」
ハボック、アルフォンス共に納得。
ホークアイは「まぁ」と笑い、ロイは小さく落ち込んだ。
だがそれで理由が思い当たったらしく、アルフォンスだけが「そっか」と小さく呟いた。
「で、大佐。錬成と手作りと購入、どれがいい?」
先ほどと同じ問い掛けに、ロイは少し視線を逸らして考えた。
エドワードの錬成のディティールが少し他人と違うことは噂に聞いているし、手作りということは手編みになるだろうが・・・ロイから見てエドワードは器用に見えない。
よって一番安全で、恐らくエドワードにとっても楽なのは。
「君が私のために選んでくれるのなら、購入したもので構わないよ」
「よっし。じゃあ買う」
にっこり笑ってエドワードはそう答える。
その笑顔は可愛らしく、ロイも思わずつられて微笑んでしまった。
「じゃ中尉、一緒に買い物行かない?」
「ええ、行きましょうか」
そう言って二人連れ立って出て行くエドワードとホークアイを見送って、ハボックは煙草の煙を吐き出した。
「大佐は本命からのバレンタインプレゼントがアリか・・・」
「日頃の行いの良さだ」
ロイの言葉にハボックは心の中で「嘘をつけ」と呟く。
一方残されたアルフォンスは。
「・・・大佐って微妙に馬鹿ですか?」
失礼以外の何物でもない言葉に大人二人は驚いて鎧を見た。
アルフォンスは少し首を傾げる。
「どうして手作りって言わなかったんですか?」
「どうしてって・・・手作りだと大変だろうし、それに鋼のが編み物をうまいようには見えなかったからなんだが」
「兄さんは編み物うまいですよ?最近作ってないかもしれませんけど、編み物は機械鎧でもきちんとできるし。それに手編みにすれば少なくとも数日はマフラーを編むのにイーストシティに滞在することになったはずなのに、買ってしまえば1日で終わりですよ?」
アルフォンスの言葉にハボックが「へぇ、意外」と呟く。
そしてロイは・・・・。
「・・・鋼のは編み物が出来るのか?」
「出来ますよ。兄さんは元々家事一般は得意ですし。ボクたちの母さんが毎年この時期にマフラーを編んでくれたんです。母さんが死んだ後は兄さん一生懸命練習して、ボクと兄さんのマフラーを作ってくれてたんです。最近は旅をしてるから作ってないですけど」
アルフォンスのその言葉に。
ロイはいつの間にか執務室を飛び出していた。
しばらくして銃声。
「・・・そりゃあ書類を片付けずに追ったら撃たれるわな」
ハボックが寂しそうに呟き、アルフォンスは疲れたようにため息をついた。
その2週間後、アルフォンスとホークアイ、そしてハボックはエドワードから色違いの手編みのマフラーをもらった。
ロイがもらったマフラーが手作りであったのかは神のみぞ知る。
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