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鍵、掛けたっけ?
「あれ?」
旅の途中のある日、ジープを運転していた八戒が何かを思い出したように呟いた。その小さな声に最初に反応を示したのは後ろに座っていたはずの悟空だった。
「なに、どうしたの?八戒」
「えぇ、ちょっと心配になったことがありまして・・・」
その返答に、益々悟空の興味がそそられる。どちらかと言うと、あまり何事においても動揺を見せない八戒が感じる心配事とは一体なんなのか?
「今朝まで泊まっていた宿に忘れものでもしたか?」
聞いていないようでやはり聞いていたようだ。助手席でふんぞり返っていた三蔵が視線だけを隣に座っている青年の整った顔に向けた。
「いえ、昨日の宿のことではないんですが」
笑顔を貼り付けたまま、穏やかに呟いた。
「鍵、掛けたかなぁって・・・」
「は?」
中々八戒の言わんとしていることが掴めない。八戒を除く他の3人の声がユニゾンで響いた。
「だからですね」
この旅に出る時に、悟浄の家の鍵、掛けたかなぁ?って・・・。
一瞬、ジープの上に沈黙が下りた。次に口火を切ったのは、その家の主の悟浄。
「・・・・・・・。八戒」
「困っちゃいますよねぇ。三蔵と悟空が、森の中で妖怪に襲われていたのを助けに出ただけのつもりだったから、鍵掛けて来ていないかも知れませんし、確かあの頃は、急に旅に出るつもりもなかったから、腐りやすい物を冷蔵庫に入れておいたままだったかも知れませんし」
「・・・・・・。八戒さん?」
「あの家、街から離れて建っているから、今頃動物とかが勝手に入って家中がグチャグチャになっているかも知れませんよ?」
「・・・・・・・・・・。」
「すいません、悟浄。今頃あの家、人の住めるような状態じゃないかも・・・。あ、もしかしたら」
八戒は、こともなげにあははと笑ってこう締めくくった。
「今頃、誰かが移り住んでいるかも」
無事に天竺から戻っても、家無しの可能性もあるってことかよ。
悟浄は、何となくこの世の儚さを感じ、ハイライトのパッケージを手に取った。
黒ハチ参上。いや、「黒ハチ」というより「天然八戒」か?。
本当は、おまけも付けようと思ったのですが、何となくここで終了。
鍵の真相ですが、八戒さんはその辺の抜かりはないと思います。
(2002.10.02UP)