目の色
 彼らの目の色はすごく綺麗だと思う。
 例えば、悟浄の紅い色。地平線にかかる太陽や空の色を見ると、彼の瞳の色を思い出す。
 例えば、悟空の金の色。ふと、見上げた太陽は眩しすぎて、彼の笑顔と一緒に思い出す。
 例えば、三蔵の紫暗の色。太陽が沈みきった黄昏時の空の色を思い出す。
 全てを包み込む空の色。そんな瞳の色を持つ彼らは、この空に負けないくらい大らかで、僕みたいなちっぽけな存在すらも受け止めてしまう。
 何もない僕は、それが羨ましくて、でも、そんなことが羨ましいなんて子供みたいだと、ほんの少し恥ずかしくなった。
 しかし、ついうっかり「良いなあ」と呟いてしまったら、それを隣に寝転んだ人は聞き逃してくれなかった。こんな些細なことにさえ、僕の器の小ささを刺激されてしまう。
 半ばヤケクソで、僕の卑屈な思いを冗談に紛らせて彼に言えば、分かったのか分からなかったのか、なんだか難しい表情をしていた。
 やっぱり、呆れられてしまったのだろうか?



「八戒」
 そのまま黙ってしまった彼が暫くしてからふ、と僕の名を呼んだ。てっきり眠ってしまったのか、と思っていたのに。むくりと起き上がって、晴れた空を眺めながらなんでもないように呟いた。
「俺は、八戒の碧の眼の色、好きだ」
「え?」
木々の葉の色だから好きだと言う。空からこちらに視線を移した。真っ直ぐな瞳。
「森の中の落ち着く雰囲気は、八戒のイメージだなあ、って思ってた。何でだろうって不思議だったんだけど、あれって八戒の瞳の色だったんだな」
やっと謎が解けたよ、と笑う。
「八戒が俺達のことを良いなあ、と思っているのと同じように俺たちは八戒に癒されている。それで良いんじゃない?」
 やっぱり彼はその瞳の色と同じように眩しい。そう言って僕を見下ろす悟空の迷いのない笑顔はやっぱり良いなあ、と思った。
 彼らは僕に癒されているというけれど。
 彼らが僕に癒されてるのと同じくらい、それ以上に、僕は彼らに癒されている。
 えーと、NO.4の「空の色」の続きです。
 なんだか書いていて分からなくなった一品。あれ?。
 てなわけで、お相手は悟空ちゃんでした。(2002.10.12UP)