せっかく付けてもらった名前だから、いろんな人に教えたい。
「俺の名前はぁ・・」
『悟空』っていうんだ。
何故だか分からないけど、この名前をいろんな人に知ってもらいたい。俺の名前を呼んでもらえることがすごく嬉しい。
それが何故だか分からないけど。
せっかく知り合えたのに、名前を教えられないなんて、なんか哀しいじゃん?。
せっかく教えられる名前があるのに、呼ばれないまま別れちゃうなんて哀しいじゃん?。
「『悟空さん』ですか・・・。良い名前ですね」
つい最近知り合った碧の瞳を持つ人は、そう言って微笑んだ。
俺の名前を褒めてくれたのは、ここに来てから初めてかも知れない。だって、三蔵は、どう感じているか以前に、あまり、俺のことを気にしていない様だし、他の寺の坊主たちは、俺と話をすること自体嫌がっているのが分かる。
もしかしたら、俺の話をじっくり聞いて、真っ正面から受け止めてくれたのって、この人が初めてかも・・・。
だから、俺はつい嬉しくなって、もっともっとこの人と話をしたいと思った。
「だろ?。俺もこの名前気に入っているんだ。」
向かいで碧の瞳がすっと細められる。
「えぇ、本当に良い名前だと思いますよ」
空―――目には見えないもの―――を悟ることができる。という思いが込められた名前、あなたにぴったりです。
「どうしました?」
「ん・・・、なんだろ?なんだか分かんねーけど…」
前にもそんなことを言われた気がする。それが誰だったか思い出せないけれど・・・。 |