ふと気がついたら、そこに足が向いていた。
正直、どうして足が向いたのか、自分でもピンと来なかった。ただその時は、お礼がしたかっただけで・・・。
「死ぬ」ことに執着していた自分の背中を「生きる」方向へ押してくれた最初の人。
考えたら、すべてを否定して生きてきた自分よりもきっと、心の何処かで誰かを求め、それでも裏切られながら生きてきた彼の方が、ここから逃げ出したくなる要素は多分にあったのではないだろうか?。
結局、自分は彼よりも弱い人間だったのだろう。
そう振り返って考えられるようになったのは、彼と同居すると決めてから、ずっとずっと後のことだったけれど。
そこに足が向いたのは、何故だったか良く分からない。
ただ、綺麗な瞳を見つけて、その人がものすごく切なそうに自分に謝ってきたから、放っておけなかっただけで。
紅い髪の男は、あの人は死ぬだろうと言っていた。自分の大事な人が「迷惑だ」と言った。
ただ、死なせたくなかった。きっと悪い人じゃないから、もう一度真っ直ぐ自分を見詰めた碧の瞳を見たかったから。
ムズカシイことは良く分からないけど、これだけは言える。
生きていくことがあれば、きっと「生きてて良かった」と言える時がくる。
どうしてここに来たのか分からない。
もっともっと子供の頃、お師匠様は「声が聞こえたんですよ」と言って笑顔を向けた。だから自分はここにいる。
なら、この目の前のドーブツは?。
頭の中で自分を呼ぶ声が喚いていて、ただただ、煩かった。1発殴るつもりが手を差し伸べていた。
声が聞こえた。
こいつなら、声にならない声で誰かを求めるほどの気持ちが分かるのかも知れない。
そこまでして求めた「誰か」を欲する気持ちは昇華しているのか、まだ分からないけれど。
ここに来た理由。
思わせぶりなことを言われて、諦めたのにいきなり死んだと思った人が現れたら、普通驚くだろう。
驚かなかった自分にオドロキだったが。
一言物申すつもりでここに来たわけだが、多分これから先腐れ縁で何かと付き合いが続くような気がしてならない。
現に、同居人と決まったヤツの後見人であるわけだし。
「生きて変わるものもある」
その言葉に、そばで聞いていて自分も何かが変わるだろうか?と希望を持ってしまった。ということは癪だから、死んでも言わずにおくつもりだが。
「なんだかんだ言って、ここまで来ちゃいましたねー」
「お前らと旅なんざ死んでも御免だと言っていたのがウソのよーだぜ、三蔵サマ?」
「でも、4人で旅が出来てすっごく楽しーから良いじゃん」
「・・・・・・・・・・。コーヒーはまだか・・・。」
出会えたことの奇跡、それを言葉にすると、ものすごくウソっぽいから、心の中に留めておくことにして。
自分らしいことが相手に対する最高の感謝の言葉だと信じて。
―暗闇も 孤独にも 立ち向かう 君と出会えた悦びを 必ず伝えにいこう―
(「Realize」 玉置 成美)
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